理性の自信

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カラス屋の双眼鏡(松原始)

 カラスの教科書が面白かったので、松原さんの本をもう1冊買ってみました。

『カラス屋の双眼鏡』

 カラス屋さんと言われた松原さんが書く、生物についてのエッセイです。
 カラス以外にもクモやヘビ、はたまた正体不明の足跡など、楽しい話が読みやすい文体で書かれています。
 おそらく、小学生でも読めるので、動物好きなお子様がいたらオススメするのもおもしろいかも?

 個人的に読んでいてもっともハッとしたのが、ジュウシマツの飼育レポートです。

 メスは発情期になると産卵をするのですが、一羽で買う場合にはオスがいないと無精卵になるし、体に負担が増すばかり。
 そこで卵を産ませない作戦を実施します。
 ジュウシマツは特定の動作が次の動作に移行するスイッチになっているらしく、

・巣作りをする。
・巣作りが終わると産卵する。
・産卵した卵を2週間近く温める。
・2週間を過ぎたら卵を巣からどけたり食べてしまう。


 という行動パターンを、一つの工程も飛ばす事無く行われます。
 卵をどけるのは、おそらく無精卵やその他の要因で起こるハプニングへの対応でしょうか。
 無精卵をいつまでも温めていては、いずれ親鳥も死んでしまいますから。

 そんなわけで、ジュウシマツの健康の為に産卵を人間側で防ぐためには、巣を作らせないと良いわけです。
 例えば陶器の巣などを利用するとクチバシで叩けずに巣作りが出来ないので、その先の行動である産卵をしないようになります。
 それでも根性のあるメスは、餌の青菜を巣に入れ巣作り終了とし、産卵してしまう事もあるとか。
 
 なかなかよくできた本能システムだなと感心する反面、哺乳類の本能についてふと思い出しました。

 例えばクマやライオンの場合、新しいオスがやってくると、前のオスの子供が殺される事があります。
 子殺しの理由は、自分の遺伝子を残す為で、同じ餌をとるなら見知らぬオスの子よりも自分の子供を育てた方が良いのは当然のお話。
 メスはオスを止めようとはするものの、最終的にはほぼ防ぎきれずに子供は死にます。
 するとメスはジュウシマツのようにスイッチが入るのか、子殺しをしたオスと交尾が出来るように発情期に入るわけです。

 なんと残酷な本能なのだろう!

 と嘆くのは簡単ですが、それでは我々人間がどれだけ理性で生きているのか、迷う事も多々あります。
 
 人間もシングルマザーの愛人が子供を殺す虐待死事件はちょいちょいありますし、今まで仲の良かったカップルが、
「別れたらすっぱりと気持ちを切り替えて、次の恋人を探す。」
 という事も珍しくありません。
 恋人の前の旦那の子供なんて今の旦那にとっては余計な存在でしかないし、昔の恋愛を引きずっていると繁殖活動にも差し障ります。

 他にも油が好きな理由はカロリーが豊富だと脳が知っているからと言われていますし、濃い味の料理が飽きやすいのは栄養の偏りを危惧して体が拒否するからと言われています。

 これらの行動も、ホモサピエンスの持つ本能なのでしょうか?
 その中で理性による行動の割合は、どれだけなのでしょうか?

 読みやすい文章の中に深いテーマが隠されているような1冊でした。


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[ 2017/05/12 09:00 ] 日記 | TB(0) | CM(2)