老舗欲

 利根川を越えた茨城県に、美味しいお団子屋さんがあります。
 朝から手作りで仕込まれたお団子は柔らかいお餅が使用され、値段は1本50円とか60円とか。
 比べてはいけないのかもしれませんけれども、京都の老舗よりも美味しいかも?というレベルの味です。

 ご近所さんや家族が買ってきてくれ、とても美味しいのですが。
「おじいさんとおばあさんが二人でやってるのよ。」
 そんな話がちょっと気になりました。

「跡継ぎがいないんでしょ? お子さんもお孫さんも会社勤めをしてたりして。」
「なんでわかったの?」

 私も欲はありますから、美味しいものが安く手に入るに越したことはありません。
 だた、朝早起きして一生懸命仕込んでも1本数十円の稼ぎなら、私が子供や孫の立場なら迷わず会社勤めを選びます。

「お団子だけじゃやってけないでしょ?」
「太巻きや和菓子なんかも売ってるわよ。」
「買ってくるのはいつもお団子だけだよね?」

 思うに、今の日本人は安くて良いものを選び過ぎているのだと思います。
 そりゃあ安いお団子の存在は素晴らしいです。
 コストがかからないように素材を選び、努力し、工夫を重ねた結果ですからね。

 でもそのお団子の先には、お団子を作る人や家族の生活があり、お団子を作る事を辞めてしまわれると、二度とその味を楽しめないのです。

 先程京都の老舗を比べた理由はここにあります。
 京都の、例えば清水近辺のお団子屋さんは、徹底的に自分たちの製品に箔を付けます。 
 店舗も昔ながら、色々とこだわりを書いて店内に貼って見たり、食器や持ち帰りの箱にこだわって見たり。
 値段も高く、格安団子に慣れているとぼったくりと思える事もあるでしょう。

 ただ、それだけ高い料金を得られるというのは、それだけ家族が食べていける可能性が高くなる事でもあります。
 箔があるという事は、胸を張れる可能性も高まります。
「江戸時代から続く老舗菓子屋の若旦那」
 って、ちょっとワクワクする肩書じゃありません?

 物事が老舗である為の一番の条件は、それはやっぱり製品の良さです。
 加えて、
「うちはこれだけのお金をもらう権利がありますので!」
 っていう、外から言えば強気の姿勢、内から言えば自己の仕事への正当な誇り、というのが必要なのではないかなと。

 おそらく日本全国に結構あると思うんですよね。
 料理や菓子の質は良いのに、価格が良心的過ぎて当代で滅びてしまうお店って。
 人生の後輩たちに味わってもらえない素晴らしい物が沢山あるって、悲しいなあ。

スポンサーサイト
[ 2016/08/22 09:00 ] 日記 | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://honkedoy.blog.fc2.com/tb.php/954-9b7513c8