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安全ピンは安全ではない話

 電車内での痴漢を許さないという意思表明として、黄色い安全ピンを持ち歩くという運動が実施されているそうです。
 その運動そのものは有意義ですし、是非ともやっていただければなと思う反面。

「痴漢に安全ピンを刺してしまえ!」

 という方もいて、そちらはさすがに止めて頂きたいです。
 何故なら、それはいわゆる『自力救済』にあたる行為で、痴漢の犯人とはまったく関係無くやってはいけない事です。

 その理由は色々ありますが、一番大きいのは『犯罪を裁く権利が安全ピンの持ち主に無い』という点です。
 自身に触れた手は痴漢行為によるものなのか、それとも偶然なのか、それを自分が決めて自分が処罰をしてはいけません。

 もちろん犯罪行為が減らないのは嘆かわしい事だし、痴漢行為をする犯人は許せませんが。
 被害が減らない事を理由に自力救済と行ってしまうと、いつか自分達にも自力救済の刃が向かってくる事になると思うのです。

 例えば、ある家庭が野良猫の糞に悩まされているからと、庭に毒入りのエサを巻きました。
 自分が外飼いしている猫がその毒入りエサを食べて死んだ場合、猫の糞害が減らないから家族の一員である猫が死ぬのは仕方がないと思うでしょうか?

 例えば、原付を運転していたら道路の首の高さに張られていたロープで頭がひっかかり、転んでしまいました。
 ロープを張った人はこの道路を走る暴走族の騒音に悩まされており、警察に行っても解決しないから自分で対策をしました。
 あなたはロープが原因で転倒してしまった事を許せますか?

 『自己救済』の怖い所は、やられたら嫌な事、嫌な事をやられた相手、その相手に対する懲罰、それらすべてを自分だけで決めてしまえる事でしょう。
 安全ピンで刺すことが適切か、毒エサは許容範囲か、原付のライダーをコケさせるのはOKなのか。
 客観的な基準が全くないので、最終的には強い力(暴力や権力)を行使できる人が好き勝手にできる状態になります。

 そしてこれが一番大事なポイントです。

 仮に色々な人のツイッターを読まれた方が痴漢対策に安全ピンを持ち歩き、誰かを刺してトラブルが起きたとしても、ツイッターで勇ましく発言されていた人達は誰も責任を取ってくれませんし、おそらく罪の軽減などの嘆願署名をしてくれることもないでしょう。

 自動車界隈でもそうですが「制限速度を守っていたら車の流れが悪くなるから」という人達が、車の流れを重視した結果速度違反を起こした人を救済したケースは聞いた事がありません。反対に制限速度で走っても逮捕されないのは「制限速度で走る事は問題ない」が法律により担保されているからです。

 私自身は痴漢は許せない行為だと思いますし、実際に裁判所へ行って痴漢の裁判を見て学んだこともあります。
 被告は電車内で女子高生に猥褻行為を働いた卑劣な男で、裁判を傍聴している側も怒りを感じました。

 しかしながら、犯罪が減らないからと自力救済を認めてしまうと、巡り巡っていつか自身にも災いが降りかかる時が来ると思います。
 窃盗、傷害、交通違反、詐欺、その他諸々の犯罪を許せない人の正義の鉄拳が、自分や自分の家族に振り下ろされる事態となった場合、貴方は満足ですか?

 本当にその犯罪を起こしたか起こしていないかに関係なく、です。

 ちなみに、
「安全ピンで刺されても怪我なんかしないんだから大丈夫でしょう?」
 なんて怪我の有無で犯罪の判断をされると、

「別に怪我をするわけじゃないから、痴漢されても大丈夫でしょう?」
 となってしまいますよ。

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[ 2019/06/03 09:00 ] 日記 | TB(0) | CM(2)