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戦いの中で戦いを知らない

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海軍めしたき物語(高橋孟)

 今回も素晴らしい体験談に巡り合えました。
 作品のタイトルは『海軍めしたき物語』といい、海軍主計兵として任務に就かれていた高橋孟さんの体験談です。

 街中で見かけた、ペンのマークの付いた制服姿のインテリ軍人に憧れ、海軍主計兵として働くことになった筆者。
 海軍事情を知る人が主計兵という単語にやたらニヤニヤした顔で反応するのでおかしいなと思ったら、しかるべき学校を出ていない主計兵は烹炊作業員となり、軍艦の調理室でご飯を作る任務に就かなくてはならなかった事が後にわかりました。

 作者が着任した職場は戦艦霧島。

 帝国海軍に存在する数多い軍艦の中で乗務員の多い戦艦はもっとも厳格な職場で、先任兵(先輩)のシゴキは相当な物。
 尻を毎回宮島(しゃもじの事/宮島名物なので)で叩かれ、烹炊員のお尻は誰でも黒く変色していたそうです。

 霧島といえば艦これでも有名な、勇ましい戦艦でありながら、作者のお仕事はあくまでもめしたき要員。
 
 同艦が日米開戦の発端となる真珠湾攻撃に参加するためにハワイへ向かうも、
「今回はどこへ演習に行くのかな?」
 程度で、ハワイへ向かう途中の台風による艦の揺れを相手に、一斗樽の醤油片手に、片手で梯子を上っていたそうです。

 結局真珠湾攻撃直前はお味噌汁を作っていて、先制攻撃に成功したのはあとから艦内放送で知ったそうで、
「艦内はお祭り騒ぎだから、これでしばらくシゴキは無いな。」
 と安堵していたとか。

 また主力空母四隻が全滅したミッドウェー海戦前は昼食の五目御飯を作っている中で、急に戦闘食糧(おにぎり)にするように指示が出て、烹炊員総出でおにぎりを作り竹の皮で包む作業で大混乱。その際たまたま倉庫へ野菜を取りに行く途中で、燃えさかる空母と炎にたまらずに海に落ちていく空母の乗組員が印象的だったそうです。

 たしかに、1000人以上が乗る戦艦において戦いがどうなっているのかを見られるのは、一部の限られた人間だけだったでしょう。
 主計兵は煮炊きをしていますし、機関兵はエンジンとにらめっこですし、その他ほとんどが艦内の作業ばかりで、横のつながりはありません。
 海軍の体験談として良く出回る勇ましい話が話し手の本当にあった体験談なのかというと、必ずしもそうでないのでしょう。

 これ一冊で戦争のすべてを知る事は出来ないものの、戦争を体験した方の話としては大変良い一冊でした。
 高橋孟さんは漫画家でもあられたので、烹炊所やシゴキの内容がわかりやすいイラストで描かれており、『わかりやすさ』で勝負すれば今まで読んできた海軍本の中でもトップクラスかもしれません。

 ちょっとプレミアがついているケースもある(といってもプレミア相場でも1000円以下)ので、図書館などで借りても良いと思います。

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[ 2019/10/24 09:00 ] 日記 | TB(0) | CM(0)