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オカルト化する日本の教育

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オカルト化する日本の教育(原田実)

 先日、原田実さんの『オカルト化する日本の教育』という本を読了しました。
 原田さんは偽史(偽物の歴史)や偽書(偽物の書物)について研究されておられ、当サイトでも『江戸しぐさ』『東日流外三郡誌』など、日本を騒がせた偽史(&何らかの形で原田さんが関わられた)書籍を紹介しております。

 本書でテーマとなっているのは、教育現場に広がりを見せる偽史(≒オカルト)の存在です。
 
 国全体の中でもっとも科学的に語っていかないといけない場所のひとつ、教育現場。
 しかしその場所でもオカルト的な思想が広がっています。
 道徳の教科書でも取り上げられた『江戸しぐさ』もそのひとつ。
 江戸時代には実際に存在しなかったらマナーが昭和時代に作られ、それが江戸時代にあったかのように紹介されています。
 
 また近年では『親学』という新しい概念も定着しつつあります。

 これは簡単に言うと、
「親が伝統的教育法を学べば、いじめを防いだり発達障害の予防になる。」
 というもので、特に後者については医学的に考えられないお話です。
(自閉症やアスペルガー症候群、ADHDなどが親の教育で予防できる、などという事はありませんので)

 それではいったい誰がこのような概念を教育界に普及させたのか。
 原田さんは本文の中で、『TOSS トス Teacher's Organization of Skill Sharing(教育技術法則化運動)』の存在を挙げられています。

 TOSSは日教組(日本教職員組合)の影響が弱まった教育現場に新勢力として登場、現在小中学校を中心に1万人以上の教員が所属する組織です。
 立場は日教組の正反対で右派及び保守の傾向が強く、政治家や企業家、宗教家など多くの支持を得ており、全国大会には安倍総理も応援メッセージを送るほどの大規模なイベントとなっています。
 また親学の普及には日本会議という教育思想組織も積極的に関与しており、こちらも政治家の石原慎太郎さんをはじめ、企業のトップの人材、仏教団体、神道団体と、様々な有力者が役員に所属しています。

「今までの教育界は間違えていた、これからはより良い教育を行わないと!」

 という考えは間違えではないのかもしれませんが、こう様々な思想が入り乱れて教育方針を決めようとなると、いわゆるトンデモ思想までもが『より良い教育』に入り込んでしまう事にもなりかねません。

 試しに、TOSSが今までに推奨してきた思想や教育を紹介してみますと。

 江戸しぐさ:「江戸時代に存在した古き良きマナーを現代に復活させ、モラルのある社会にしよう」というもの。
 親学:「伝統的子育てを復活させ、多くの障害や問題を解決させよう」というもの。
 水からの伝言:「水に綺麗な言葉をかけて凍らせると、水に汚い言葉をかけて凍らせた時より水の結晶が綺麗になる」というもの。
 ゲーム脳:色々な話がありますが、簡単に言うと「TVゲームで遊んでいると脳組織が破壊される」というもの。
 1/2成人式:「10歳に2分の1成人式を行い、親に対して10歳まで育ててくれたことを感謝し、残り10歳の養育をお願いする」というもの。
 EM菌:「EM菌には様々な効果がある」というもの(全部書いていたら大変なので、興味のある方は検索してみてください。)
 
 その他、「運動会の組体操で巨大なピラミッドを作る」という教育法も、TOSSのサイトで指導法が公開されています。


 読んでいるうち、親への中心や「昔は良かった」病、父兄を感動させる組体操など、保守的(正確には儒教的というべきでしょうか?) の要素を感じた事に加え、何故ここ最近で組体操や1/2成人式が話題になっているかが、この本を読んでなんとなくわかったような気がします。

 今の組体操は私が小学生の頃に加えて大規模化、それに比例して生徒が大けがをするようになったそうですが。
 なるほど教員同士で父兄を感激させようと大きなピラミッドを作るノウハウを全国レベルで普及させれば、それが危険性の高い行為であってもやってしまう先生もいるでしょうし、背景を知らない生徒たちも頑張ってしまうでしょう。
 また1/2成人式が何故今ブームなのかとか、水からの伝言やEM菌の単語をやたら耳にするのは何故かとか、そういった色々な『謎の氷』が、私の中でじっくり溶けていくような感覚を得ました。

 それじゃあなぜこのような団体が非難されずに現存している理由は、おそらくは現政権の票田だからでしょう。
 選挙で力にならない組織に対し、安倍総理がわざわざ応援メッセージを出す事もないでしょうし。
 
「どうせ世の中変わらない」なんて棄権投票を繰り返していると、政治家はこういう固定客(固定票)になってくれる組織の為に動いてしまうという良い例であり、今後も投票は皆勤賞を続けていこうと強く思いました。
 
 それにしても、原田さんの著作は毎回得られるものが大きいですね。
 本書に興味をお持ちの方は、先に江戸しぐさについての本をお読みになるとさらに楽しめるのでオススメです。

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[ 2019/05/29 09:00 ] 日記 | TB(0) | CM(2)

興味深い本やね。ピラミッド、たいてい私体格いいから一番下やったけど大変やったわ。学校教育、今思えばいろいろ理不尽だったり変だなってのあったよね。
変であることに気づくのは大人になって多少視野が広がってからの話で、子どもの頃はそういうものとして受け入れるしかなかったなぁと。
[ 2019/06/01 19:23 ] [ 編集 ]

感動中毒

>フェレ姉さん
我々の世代のピラミッドは、まだ現在より小規模だったみたい。
この団体の影響が強くなってからは、私や姉さんが作っていたピラミッドよりさらに倍以上のサイズになっていて、骨折する生徒も増えてしまっているのね。

一番理論的に考えないといけない立場の人が精神論をかざすのは、生徒にとって不幸かなと思ったよ。
[ 2019/06/01 19:59 ] [ 編集 ]

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