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モグラがカッパに

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陸軍潜水艦 潜航輸送艇マルゆの記録(土井全二郎)

 2020年最初の読書感想文。
 令和二年初の感想文は、土井全二郎さんの「陸軍潜水艦 潜航輸送艇マルゆの記録」です。

 時代は太平洋戦争(大東亜戦争)。

 我々が今知っている通り、陸軍は終始物資の不足に悩んでいました。
 戦車などの兵器はもちろん、弾丸も、燃料も、東南アジアをはじめとする遠征先ではそもそも兵隊さんが食べる食料も足りませんでした。

 この事態は陸軍もある程度知っており、物資の輸送作戦をしたい気持ちは山々だったらしいのですが。
 問題は物資の輸送の担当は海軍で、陸軍ではない事でした。
 船が無いと物資は運べませんから。

「敵国陸軍」「敵国海軍」と当時の日本軍では陸海軍の中が悪く、海軍は物資や人の輸送に消極的でした。
 基本的に海軍のスタンスは軍艦(戦艦とか空母ですね)を活用した艦隊戦を重視し、物資輸送で利用する安全な海路の確保、今でいうシーレーンについてはあまり大事に考えていませんでした。

 そんな環境でしたから、陸軍は海軍に気を使わずに自分達で物資を戦場に輸送する作戦を考えます。
 敵に気づかれずにこっそりと戦地へ向かい、食料等を送りたい。

 そこで思いついたのが、陸軍専用の潜水艦の開発です。
 海軍に内緒で民間の施設や研究者の協力を借り陸軍専用の潜水艦を作ってしまおうという、スゴイのだか無駄なのだか評価のしにくいプロジェクトを立ち上げました。

 建造された潜水艦の名称は三式潜航輸送艇。
 主にゆそう(輸送)の「ゆ」という文字を丸で囲んだ文字をとって「まるゆ」と呼ばれています。

 苦心の末それなりのものができたものの、速度は出ないしトイレも無い。
 あまりにも小さいので居住性は最悪で、輸送専門なので魚雷も積んでおらず、エンジンがすぐに故障するという、なかなかな有様。
 水中での速度がほとんど出ない為に水上を進んでいくという、コンセプト的に謎がいっぱいの潜水艦でした。

 しかも「海軍に内緒で」作られたので、海軍の人間はまるゆの存在を知りません。
 海軍の軍艦は国籍がわかるように旭日旗を付けているのですが、陸軍なので付けているのは日章旗(日の丸)。

 海軍から見たら海軍所属ではない日の丸をつけた潜水艦が隠れもせずに水上をスイスイ進んでいるわけです。
 それも日本の軍艦が多く存在する海域や港に。
 結果、味方である海軍の輸送船から体当たりを受けたり、軍艦から攻撃を受けたりと散々な目に遭いました。

 まるゆが登場した直後はアメリカ軍側で見つけても、
「潜水艦なのにずっと水上を進んでるし、旭日旗を付けてないしで、オトリか何かだろうか?」
 と怪しんで結局攻撃をしなかった記録も残ってます。
  
 その他の詳細な興味深いエピソードは本書を読んでいただくとして、もうちょっと海軍と仲良く出来なかったものでしょうかね。
 陸海軍が仲悪いのは多くの国でありえるお話(アメリカでも陸軍と空軍で言い争う事がある)ではありますが、海軍に頭を下げて尋ねに行ったら潜水艦のノウハウを教えてもらえるだろうにと、現代の日本人からすると不思議でなりません。

 昨日まで銃や大砲の操作をしていたような人達を集めて、
「今日から潜水艦の乗組員になる為の訓練をしろ」
 と命令された陸軍の軍人さんも、さぞ苦労された事でしょう。

 悲劇な部分に少し笑いが生まれる、不思議な秘密兵器のお話でした。 

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[ 2020/01/10 09:00 ] 日記 | TB(0) | CM(0)

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